[1日目] 午後12時、対象者(依頼人の奥さん)の自宅にて、張り込みを開始した。昼間の郊外の住宅街は、なんとも喉かだ。おまけに天気も気温も良く、眠くなりそうな日だった。しかし、こんな場所が最も張り込みにくいのだ。不審者と思われぬよう、最善の気遣いが必要なのだ。同じような2階建ての戸建が並び、舗装された道路、この綺麗に整った街並みはドラマでお馴染みの「幸せ家族」が住んでいるように思える。が、そうでもないのが現実とういうもの。今回の依頼人は、40代の男性だ。この目の前のマイホームを手にいれ、奥さんと2人暮らしだ。子供はいない。専業主婦である奥さんだが、最近かくれて携帯のメールをしていたり、昼間家に電話をかけてもいない事が多く、浮気をしているのじゃないかと疑っているのだ。浮気をしている確信はないので、真実が知りたくて、調査を依頼したいということだった。
30分もすると、対象者が家から出てきた。その辺のスーパーに買い物に、という格好ではなく、パステルカラーのワンピースに、スカーフを巻き、手には春物のコートと鞄を持っている。さて、彼女はどこに行こうとういのか。
駅に向かい電車に乗ると、この辺では一番栄えている駅で降りた。少し早歩きで、真っ直ぐと向かった先は、駅の近くのよくある喫茶店だった。待ち合わせでもしているのか、店内を一通り見渡した後、2人席に腰を下ろした。そして、私の前に運ばれてきた、この珈琲がまずい、実にまずいのだ。これでよく喫茶店の看板を上げていられるものだ。しかしながら、入れ替わり人が入ってきて、店内は混んでいる。この客どもに、私の珈琲を飲ませてやりたい位だ。
1人で入って来た、20代後半位のスーツ姿の男性が、店内を見渡し、対象者の席に座った。2人の様子は、親しげで、初めて会うようでも、かしこまった様子でもなかった。間もなくして、2人揃って席をたち、喫茶店から出た。外に出た2人は、気持ち周囲を気にするような感じで早歩きで、街中の方へ進んでいく。そして、周りがラブホテルが建ち並ぶホテル街になると、その中の一軒に入っていったのだ。これは、これは、依頼人の勘が当たったのだ。ただ、相手がこんなに若いとは、思ってもいないだろう。
ホテルの前で張り込む事2時間、午後4時に対象者と男性が一緒に出てきた。そして、対象者は周りを見渡した後、早歩きで駅の方へ向かった。
自宅のある駅で電車を降りると、駅前のスーパーで食品の買い物をすると帰宅した。時刻は、ちょうど5時になろうとしていた。ここで、本日の調査は終了とした。
[開始 午後12時 : 終了 午後5時 調査時間 5時間]
後日、事務所にて依頼人に報告を行うと、やはり驚きを隠せないようだった
「もしかしたらと思っていましたが、これは確実ですよね。考えてはいなかったのですが、離婚も考えてしまいますね。その場合、裁判になったら、この報告書は証拠になりますか」
「もちろんなりますよ」
依頼人は、肩を落して帰っていった。調査事態は、最短時間で結果が出たが、この事実とどう向き合って、答えを出すかは依頼人次第だ。落ち込んでも、怒っても、泣いても、答えを出した時には、強くなっているものだと、この仕事をしていると常々思うのだ。
終